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暗譜のコツについての、一考察。

これ以前の「アカペラお役立ち(?)記事」は、こちらから。


ご自身も歌われてるそこのアナタ。ぶっちゃけ、暗譜捗ってます?
そんなに簡単に覚えられれば、お互いに苦労はないですよね。
少しでもラクして憶えられる方法はないものかと、つい楽譜から目が逸れてしまいますが。
そこで今回はワタクシ、全日本暗譜研鑽学会・代表理事のばらーきぃ・中山が、そんな少しでも人生ラクな方へシフトしたいという贅沢なアナタのお悩みを、一気に解消する秘策を披露いたしましょう。
実は今年、2016年は、脳機能学(そんな学問、あるのか?)の分野において画期的な発見があった年でした。
いわゆる「習い事」に関連しては、「間歇」習熟の方が、長時間だらだらと練習しているよりも効率よく身につけることができる、ということが判ったのです(すでにどこで読んだ話だったのか、忘れちゃいましたが)。

この研究結果によると、ことに身体を使って憶える物事に関しては、一旦脳に「忘れさせる」時間を設けることが重要だそうです。なので「間歇」練習、とここでは勝手に呼ばせていただきました。
これは朗報です。
とりわけ、音を出す前にまずは楽器の使い方を、身体を使って憶えなければならないような人たちにとって。
それでは次にこれを、我々のステージである「楽譜の世界」に置き換えて考えてみましょう。

でも、(歌での)暗譜の作業って、そもそも「身体を使って憶える」作業なの?
いい質問です(と、あの池上さんがいうときは、答えが用意されていないことが多い、らしいです)。
歌いはじめてそれなりの経験を積んできたアナタですから、音程やフレーズを憶えることに関しては、もはやそれほど苦痛を感じてはいないことでしょう。
なのでここでは、歌詞を暗譜すること、を考えます。
例えば英語の歌を思い浮かべてください。
ひとりの部屋で、楽譜に目を落としながら集中してみます。
しかし、なぜか一向に頭に入ってきません。楽譜を見ることには慣れているアナタの頭の中では、楽譜上の音がちゃんと鳴っているというのに。
そこで、周囲に迷惑にならない程度の小声ですが、実際に歌詞を読んでみます。いわゆるリズム読み、というやつです。
どうですか、先ほどよりも頭にすっと入ってきませんか?
21世紀の日本、英語が我々に親しみのある言語になったとはいえ、所詮はよその国の「ことば」です。ここは子どもが最初にことばを憶えるときを思い出して、無心になって大人のことばをひたすら真似ようとしてみましょう。
(歌詞の)意味なんて後で調べればいいんです。
いくつかの意味を知っている単語(や、キーワードとしてアタリをつけた単語)をヒントに、想像力を逞しくして、あくまでも自分が「憶えやすいように」物語を頭の中で作ってしまいましょう。
で辞書で調べてみて、全然意味が違っていたらご愛嬌。むしろ逆に、和訳に「間違っていた」という「経験」共々、今度こそしっかりと正しい訳を定着させてくれることでしょう。実際のところ、受験勉強的評価としてはわかりませんが、それほど大きく外れた解釈にはなっていなかったのではありませんか?
そのうちリズムに合わせて実際に口を動かしているうちに、口の方が勝手に「動き」を憶えてくれたらしめたもの。「単語の並び」を憶えようとする前に、「口が憶えてくれる」状況が実感できたことでしょう。
それでも発音の難しい単語並びの箇所があったら、そこだけは最初はゆっくり、段々と速く、口から憶えちゃいましょう。
ほらね、暗譜もやっぱり「身体を使って憶える」作業なんです。

余談ですが、その国のことば独特の発音は、実は子音よりも母音にある気がします。
また、「しゃべる」ように歌う、ということを考えた場合、ブレスの位置は先に決めちゃいましょう。もちろん後刻、メンバーが揃って歌ったときには、変更もあるかも知れませんが。ひとりで繰り返し練習をしている段階で、毎回ブレスの位置が変わってしまっていては、それだけで限られた集中力が、そがれてしまうでしょう。

曲全体の構成についても、先にざっと眺めておくと、暗譜がより捗ります。
曲サビの歌詞、実は毎回同じ(か一部分が違うだけ)ではありませんか。
曲頭から暗譜しなければならない、などというルールはありませんから、ここは憶えやすい箇所からつぶしていきましょう。「パッチワーク」の要領です。最後の最後まで梃子摺るような箇所は、結局後回しにしちゃっていいんです。
なかなか憶えられない箇所に多くの時間を割いてしまうよりも、全体の何割憶えられた、という確かな自信を得ることの方が先決です。
指揮者の故・岩城宏之さんは、オーケストラの膨大なスコア楽譜を、「画像」として憶えていたと、自らのエッセイで書いておられました。意味は異なるかもしれませんが、ちょっと俯瞰した目線で捉えることも、暗譜に有効なこともあるかも知れません。

そういうわけで、暗譜も身体活動の一環と考えるならば、「間歇」練習が有効です。
それでなくとも何かと多忙な現代の社会人、なかなかまとまった時間なんか取れません。
短時間でもちゃんと集中する回数を増やした方が、効率が上がります。実際に口を動かすことを忘れずに。これなら通勤電車内でも、できます(地下鉄なら更に好都合)。
そしてちゃんと、「忘れる時間」を設けて脳を一旦、リセットすること。四六時中心配で、曲が頭を離れない、などということのないように、適度に気分転換しましょう。

これらはコツとしてまとめると、「自分の脳を褒めながら(騙しながら)」ということに尽きます。
例えば先の、全曲の何割まで憶えた、などというのは「自信化」の好例です。
逆に、受験勉強のように、義務化したり長時間化したりして脳を酷使すると、そのときはなんとかなったように感じられても、その大半をすぐに忘れてしまい、実は定着しません。
どうしても気が向かない、集中できそうもないときは、いっそ潔くやめてしまうのもテです。

暗譜の話をしていて思い出したので、少し厳しい話もしましょう。
これも以前、テレビで見たのですが、伝統芸の最前線「落語家のたまご」も今やネット動画で勉強する時代、なんですねぇ。放送内容は、そんな若いお弟子さんのひとりを追ったドキュメントでした。
師匠の芸をネット動画で何度も見て、その一挙手一投足を憶えようとしたお弟子さん、ですが実際に高座に上がってやってみたところが、どんなに自分なりに工夫をしたつもりでも上手くいかず、今回はうまくいったと思った噺でもお客さんの反応がイマイチ…。
ここで兄弟子から、重いひとこと。
「自分が憶えたことを見せる、っていうのが一番危険なんですよ」
本当の「芸」って、そのレベルに留まってはいけないんですね。
お客さんが「置いてきぼり」になっている状況が、目に見えるようです。
音楽に置き換えるとさしずめ、「楽譜通りに歌えたことで満足してはいけない、本当のアナタの音楽は、その先にある」ってところでしょうか。
最近ではカラオケが一般的になったことで、歌が上手い人も増えているはずなのに、「人前だと全然面白くない」という人もまた増えている、ことにも通じているような気がします。

それはともかく。
どうですか、少しはラクな気分で暗譜に臨めるように…なれるわけぁ、ないですよねぇ。
ラクして憶えられる方法なんて、やっぱりどこにも、ありませんから。
ここまで行きがかり上、偉そうに書いてみましたがな~に、私もアナタと同じ、暗譜に日々試行錯誤しているひとりに過ぎません(おわかりでしょうが、「全日本暗譜研鑽学会」なんて実在しません)。
ただ、個人的な経験とそれを裏付ける形になった学説をご紹介することで、アナタの「暗譜ライフ」の試行錯誤が少しでもラクになるようなら、幸いです。

おっと。ブログなんか更新している場合じゃなかった。
私も来週の練習に備えて、早く暗譜しなければ…(こういうの、心理学で「選択逃避」というようです)。

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プロフィール

ばらーきぃ中山

Author:ばらーきぃ中山
男声カルテット・WINS阿佐ヶ谷のメンバー・ばらーきぃ中山が、遠く千葉の地より(笑)極私的に、きまぐれに、「生産性あんのかよお前は」、といった程度で、ゆるゆると情報発信しております。

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